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今から12年以上も前になるだろうか

朝の通勤時、山手線の中吊り広告を目にした時の衝撃を
今でも、鮮明に思い出すことができる。
大げさでなく、一生忘れないだろう。

真っ黒の地の紙に
銀色の文字、一部がオレンジに黒文字で
CDのタイトルがプリントしてあるだけもの。


KTY1.jpg

まったく同じではないが、こんな感じだった。

そしてこの文字の下には、同じく銀色の文字で
収録されている曲のタイトル。


今日までそして明日から どうしてこんなに悲しいんだろう
旅の宿 我が良き友よ ・・・おきざりにした悲しみは
流星 祭りのあと 結婚しようよ 襟裳岬 落陽


それらの曲名をひとつひとつ目で辿っていく間に
あとからあとから、その曲を聞いた、あるいは歌った頃の
自分、友達、匂い、情景、思いが、湧き上がってきた。
それはなんとも懐かしい、とうに忘れていたはずの思い。

アルバムのタイトルと曲名だけの文字を見て、だ。

どうにも持って行く場所のない思いを抱えて
たぶん、その広告から目を離すことができないままで
何分かを過ごしていたはずだ。




KTY2.jpg

そして、同じような感慨と衝撃を受けたであろう沢山の人と同じように
帰りに、迷わずこのCDを買った。



そういえば、伝説の「つま恋コンサート」の時、私は何をしていたのだろう?

時々、NHKで(!)彼の回顧コンサートの番組が放送される。
年代を追っての「落陽」などを聞くと、しみじみと
「ああ、拓郎も歌が上手になったなあ」と生意気に思うが
「つま恋」の頃の、ガラガラとした声で怒鳴るように歌っていた
「落陽」の方がずっと魅力的なのだった。

時代が経てば忘れられる歌だとばかり思っていたが
今、何度聞いても、これらの曲は心に沁みる。
私も歳をとったのだろうが、彼は間違いなく天才だったのだ。




KTY3.jpg

当時のフォーク歌手の中で
吉田拓郎はかなりの水準でカッコ良かった。
イケメンと言っても差し支えなかった。

今の吉田拓郎しか知らない人にそう言っても
首をかしげるばかりだが
好き嫌いはともかく、私の年代の人はこの思いを
共感してくれるのはないか。

実際、拓郎の全盛期、私は彼を好きではなかった。



もう、当時のことを思い出すと、まるで女子高生のような
文章になってしまうのだが、何年経っても
人間、中身は成長してないってことなのだろう。


ところで、私のベスト5は

1.唇をかみしめて
2.落陽
3.祭りのあと
4.おきざりにした悲しみは
5.流星

である。

岡本おさみ氏の詩はもちろん素晴らしいが
本人の言葉もまた「内なる叫び」のようで
歳を重ねた今聞くと、心が疼く。




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落語が好きというわけではなく
この人が大好きだった。


1-15-1.jpg


稀代の名人と知ったのは最近のこと。
 
 
噺家というより、昔むかしの「鬼平犯科帳」の木村忠吾役。
それが好きだった。白鴎の鬼平よりずっと良かった。
女好きで、間抜けで食いしん坊で、池波正太郎のねらいとは
違ったかもしれないが、いかにも江戸っ子らしかった。

 
志ん朝がまだ40代の男の盛りの頃、椿父は志ん朝を
「鉄火な感じで・・・」と言ったが、当時の志ん朝の
威勢がよくて侠気があって色気のある様子を
言い得て妙だ、と思った。
 
 
一般の評論家は
「口調がはっきりしていて、明るくて、艶があって聞く人を幸せにする」と
べた褒めで、当時「今こそ志ん朝を聞かねばならぬ」と朝日新聞に
評されたほどだ。
新聞記事を覚えているくらいだから、よほど気にしていたのだろう。
 
 
それから月日が流れ、私は特別の落語ファンでもないので
志ん朝をたまにテレビで見かけるだけだったが
彼が亡くなる1ヶ月前に出演した「ニュース・ステーション」の
1コーナー「最後の晩餐」を偶然に見た。

 
鰻断ちをしている志ん朝が、この世の最期に食べたいものは
「鰻」 

 
司会の久米宏が
「鰻断ちをしているのに、食べていいんですか?」と聞いたら
「いいじゃないですか、最後の晩餐なんだもの」と
人情噺の一部のような語り方をしてにっこり笑った。
 
 
ああ、志ん朝も歳をとったな、枯れる、という境地に入ってきたんだなと
感慨深く見たのを思い出す。
 

志ん朝の訃報を聞いたのは、その1ヶ月後。

 
「愛嬌」という言葉がこれほどぴったりくる男の人を私は知らない。
私にとって愛嬌とは、粋でいなせで威勢がよくて、侠気があって
色気があって、華やかで、愛すべき人、という総称だ。
こぼれんばかりの色気、という言葉があるが、志ん朝のそれは
まさに「こぼれんばかりの愛嬌」と言えるものだった。


 
今回発売されたCDを聞いた。
うなりたくなるほど見事だった。


志ん朝が朗読している
鬼平犯科帳  を買ってみようかと思っている。
鬼籍に入ってしまった志ん朝を聞く手段は、残念なことに
CD,DVDにしか残されていないのだ。




 

もう、1ヶ月ほども前になるけれど

ひょんなことからチケットを入手し、久しぶりにコンサートを聴いた。


202a7401.jpg


指揮は大好きな尾高忠明さん。

彼は20代の頃に、NHKの「音楽の広場」という番組で頻繁に東フィルを
指揮していた。

若いけれど気負ったところも驕りもなく、自然体で、時折見せるハニカミが
とてもチャーミングで、好きな指揮者だった。

育ちの良さとはこういうことか、という上品な曲に仕上げる人だった。


今回、初めて尾高さんの指揮を生で聞いたが、彼が若い時から持っていた
上品さと自然体はそのままに、さらに円熟味を増していた。

彼の手にかかるとドボルザークですらも明るく楽しいものになる。
コンサートの最後の方では尾高さんの「指揮をして楽しいんだ~♪」という
気持ちがこちらにまで伝わってきて、クライマックスに向かうに連れて
私も自然と笑顔になって行くのがわかった。
こんな経験は初めて。なんと素敵な経験をしたのだろう。
今は尾高忠明を聞くべきだ!とこの時決心した。

堀米ゆず子さんのヴァイオリンは「グァルネリ
ストラディバリでないのは音を聴いた時にわかったが、悲しいかな
素人の私は、バイオリンの名器と言えばストラディバリしか知らず
グァルネリの何たるか、も知らなかった。 
ストラディバリが女性的に艶やかな音を出すとしたら、
グァルネリは男性的な力強い音。 堀米ゆず子さんには
グァルネリがとても合う。

堀米さんは世界的のあちこちのコンサートに忙しく出演して
こんなにも有名なのに、「サイトウキネン」のオーケストラに
出演する時だけは、一番後ろの方で遠慮がちに弾いているので
それを見るとちょっと笑える。



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踏まれたら怒るくせに。

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